日本伝統工芸展
毎年恒例、日本伝統工芸展に行ってきました。
もともと、染織が好きで見に行くようになったのですが
最近は、他の工芸品を見ることも楽しみになっています。
芸術の本質は感情の共感かもしれない、と思うのですが
工芸は、感情の共感、というよりも
どこまでも「用の美」を追求しているかのように思えます。
毎年、この展覧会に行っていると、
自分の心ひとつで、見ることによる心の変化も
違うものだと感じます。
追い詰められ、切迫した気持ちの時に
美しい工芸品を見ると
心慰められ、勇気づけられるように思います。
反対に、落ち着いた心持ちで
美しい工芸品を見ると
穏やかで、安らかな気持ちになります。
心血注いで作られた美は
いつでも、心に響くものですが
特に、自分でも自分を救えないほどの気持ちの時にこそ
深く心に届くもののように思えます。
今回、二塚長生氏の友禅のお着物「葛の雨」に特に心打たれました。
大胆に雨をあしらったデザインに、葛の葉が美しく描かれ、雨と葛の葉の合間からのぞく鳥たちの表情がかわいらしく
立ち止まって、飽きずに眺めました。
このお着物を着たら、雨の景色を纏えるのかと。
そこには、かわいらしい鳥がいるのかと。
そう思ったら、胸がわくわくとしました。
雨好きだからこそだとは思いますが(笑)
色合いも落ち着いた青みの色で
年を重ねても着られそうです。
伝統工芸展を見る楽しみのひとつは
この作品を、どのように使えるだろうと
さまざまに想像できることにもあると思います。
ところで、この展覧会に通う間に
ひとつの野望を持つようになりました。
いつか、本当に心に響く「箱」があったのならば
いつか、それを、購入できたらいいなと。
凄い野望です。私としては(笑)
そんな予算、どこにあるのかと(笑)
幸か不幸か、今だ、
それほどまでに欲しいと思う「箱」には出会っておりません。
たぶんその箱は、美しいだけでなく、自分にとっての「特別」なものだと。
勝手に夢想するのです。
それにしても、何故欲しいのは「箱」なのか?
一度自分の無意識に尋ねてみたいものです。