紅茶片手に読書している。そして音楽を聴きながら

本の感想、コンサート記録など書いています。

氷点

先日は、はてなブログさんのお題で、優秀賞をいただき
ありがとうございました。
以降、多くの方にご訪問いただき、とても嬉しく思っています。
重ねてお礼申し上げます。

さて。ここからはいつものブログです。

今日、姪っ子のバレエの発表会に行ってきました。
「今回はフロリナ王女のパドドゥを踊るの」と聞いていたので
是非とも観に行かなくっちゃって、はりきって行ってきました。

娘がバレエを習っていたこともあり
バレエの舞台を拝見するのは、とても好きです。

今日も、はじめは、まだはじめたばかりの小さなお子さんがかわいらしく
舞台に出てきました。

……驚きました。
いつも、ここでとても、嬉しくなるんです。
「なんて、かわいらしいんだろう」
「ちいさな心で、精一杯踊っている姿は、なんて素敵なんだろう」
「バレエ、好きなのかな、きらきらしているな」
なんて思いながら。
なのに、今日は、何にも感じないのです。
あれ?どうしたんだろう?

舞台が進んでも、少し大きな子供たちが、がんばって踊っていても
トゥシューズをはいたばかりの子供たちが、ちょっと危なげに踊っていても
いつも、感じる胸のわくわく感も
ほっこりした幸せな感じも
何も、な〜んにも、感じません。
まるで、心が凍りついているみたい。
心が全部岩か石になってしまったみたい。
がっちがちなんです。

目に舞台は写っているけれど、なにも見えていないのです。
耳に音楽は鳴っているけれど、なにも聴こえていないのです。

あ、知らない間に、心が氷点に達していたんだ。
そう気づきました。
やっぱり、自分で思っている以上に、
今の自分は、心にダメージがあったんだって。

少し寂しくなりましたが、でも、大丈夫って。
だって、こういうことは、今までにも経験があります。
ここ最近、ちょっと大変なことが重なって
少し心が風邪をひいているんだって思いました。
季節の移ろいに合わせて、ゆっくり心を溶かしてゆこう。
やわやわとした、気持ちを少しづつ持てるようになるまで待とう。
そう思いながら、舞台を観ていました。

寂しいくらい、何も感じませんでした。

海賊のパドドゥが始まりました。
とても上手な子が、踊り始めました。

あ、凄い。この子。

腕がなんてなめらかに、音を表現するのだろう。
身体のラインが、なんて優美になめらかに
動くのだろう。
ああ、ここ、腕を肩から動かすの、すごく意識して
指の一本一本まで注意を払っている。
足を上げるの、ほんとうはここから辛そうなのに、
もう一歩先まで上げられるように、あと一息を頑張っている。
音を身体で見事にあらわしていて
踊りが音楽に融合して
なんて、美しいんだろう。
そして、なんて綺麗な表情で、踊っているんだろう。
本当は、身体を限界まで動かしていてつらいだろうに
そのぎりぎりの一つ先をゆくことは、とてもキツイだろうに
なんて素敵な笑顔で、踊っているんだろう。

そして、なんて激しい情熱を秘めた踊りなんだろう。

気付いたら、のめり込むように、彼女の踊りに見惚れていました。
そうしたら、つ〜と、涙がこぼれたのが分かりました。
あ、泣いてる。
涙で、自分が泣いていることに気付きました。

がちがちになっている心に
氷点以下になっていた心に、亀裂が入って
あたたかな気持ちが、膨らんできているのが、少しわかりました。

凄いね。芸術って凄い。
人の情熱って凄い。

以前、漫画家の友人(というか高校の先輩)が
「私が願うのは、世界平和なの。だって、カルチャーって、結局平和な世の中、平和な世界で成り立つものだと思うのよ」と言っていました。
うん、そうかもしれない。
でも、芸術って、(これも、ひとつのカルチャーですよね)
心が戦場みたいになっている時に
人は、とても必要とするのかもしれない。
だから、芸術は、今まで、人に愛されてきたのかもしれない。

好きって気持ちは、心の一番やわらかいところに、宿るのだと思う。

それは、闇を照らす、灯なのだと思う。

迷った時に、未来を示す、羅針盤なのだと思う。