紅茶片手に読書している。そして音楽を聴きながら

本の感想、コンサート記録など書いています。

牛田さんグリーグビアノ協奏曲

2月25日、東京オーチャードホールにて、
プレトニョフ氏指揮 牛田智大さんピアノ
東京フィルの
グリーグピアノ協奏曲を聴いてきました。

遅くなっておりますが
こちらに、感想を書かせていただきたいと思います。


牛田さん、以前は、かなり個性的なピアノを弾かれる方だと
思っていたのですが
ここ最近、とてもスマートでノーブルな演奏を
されるようになったと思っています。
とても繊細で、聴きやすい。

誰にでも、勧めたくなるピアニスト。

本当にいいものは、あまり言葉を必要としないように思えます。

「実際にそれを聴いてみて」これが、一番。

と、感想がここで終わっちゃうのですが(笑)
これだけでは、あまりにもアレなので。


以下蛇足です。長い蛇足です(笑)



牛田さんのピアノを聴いて、こんな詩を思い出しました。


池澤夏樹「海神」


海が神だとは思えない

たしかに
海には精霊がたくさんいて



(中略)←全部載せると、、著作権的に(苦笑)





しかし海は神ではない

鳥の小さな目が 上から海を見おろしてはいても
海はひろがりと空虚 いつでも一個のいれもの
だから目は海に色をいれ 耳は潮鳴りをいれ
おれたちは勝手な思いを それぞれの海にいれて
一歩離れてながめ なんとなく安心する

そんなわけで 海は 荒びた心を持つ
一人の神ではない








牛田さんのピアノは、あまりにも美しい風景のようであり
あまりにも懐深い自然のようであり
あまりにも繊細な、木洩れ日のようであり
精霊が存在し、嵐のような荒々しさを孕み
でも、内的な表現を、押し付けてはこない。

だから

聴く人は、その音楽に色を入れ、音を入れ
想いを入れることができる。


「色即是空 空即是色」

とはつまり、或る意味このことではないかと。
少し違うか?

でも、説明しすぎないからこそ
音楽そのものの美しさが、あまりにも美しいからこそ
一人ひとりが、そこにそれぞれの風景を見られると思ったのです。

まあ、そんな
蛇の足のようなことを考えたりもしたのでした。


とにかく、すごいピアニストだから。
もしここを読まれている方で
「聴いたことないや」という方がいらっしゃいましたら
機会がありましたら、生で(ここが大切です)
聴いてみてくださいませ。