紅茶片手に読書している。そして音楽を聴きながら

本の感想、コンサート記録など書いています。

志村ふくみ展

名都美術館で志村ふくみ展があったので、行ってまいりました。
前期後期で展示がすべて入れ替わるということで、
まずは、前期の展示のみを拝見してまいりました。
今まで、伝統工芸展などで、少し拝見させていただく機会はありましたが
このように、たくさんの作品を一度に拝見できる機会は
今までめったになかったので、張り切って言ってまいりました。

志村ふくみ氏は、草木染をされ、それで紡織をされる作家さんです。
人間国宝でもあります。

自分は、布が昔からとても好きで
その中で、志村ふくみ氏の布(着物)や著作に出会いました。

志村ふくみ氏の布は、心底美しく、
どれほど眺めていても飽きる事がありません。

絵画のように美しく、
織の柄にリズムがあり、眺めていると、草原でとても気持ちのよう風に
吹かれているような
湖のほとりで、光が湖面にきらきらと反射しているのを眺めているような、
そんなさまざまな気持ちがよみがえってくるのです。

今回の展示でも、塔(雪月華)の三作品は
寺院の屋根をイメージされ、松川菱文様をアレンジして織りだされているのですが、雪も月も華も、そのものを描くことはされていないのに
白さの中で雪を、青の中で月を、紅の中で華を
いろそのもので表現されており、
「ああ、確かに、これは雪であり、月であり、華である」と
納得したのです。

そこには雪の気配、月の気配、華の気配が感じられたのです。

「美」とは、とてもすごい力を持つのだと、私は思っています。
心砕けそうな時、救命ブイとなるのは
「美」なのではないかと思う事があります。

それは、月の光であったり、森の静けさであったり、
鳥の鳴き声であったりするものでもあるけれど。

それは、音楽であったり、絵画であったりする芸術であったりするものでも
あるけれど、

同時に、使うことを目的とした美を持つ工芸でもあると思うのです。

色を奏でる (ちくま文庫)

色を奏でる (ちくま文庫)

織と文

織と文

志村ふくみ氏は、文章もあまりにも美しいので
もし興味のある方は、著作を読んでみてください。