紅茶片手に読書している。そして音楽を聴きながら

本の感想、コンサート記録など書いています。

華竜の宮、ブログ用感想


華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
こちらは、個人ブログなので、もう少し自由に感想を書いてみようかと思い、再び登場(笑) 読み終わって時間がたっても忘れられず、時々イメージがよみがえる程に、気に入りました。以下ネタバレありなので、ご注意ください。




人類が滅亡することが、しかも50年後という微妙な期間の後にそれがおこることが予見されてしまった場合の、人間の心境というのは、どんなものなのだろう。残された希望?はたった二つ。機械生命体が宇宙へと飛び立つ舟の中に、人類の記録を保存する。ルーシーというすでに人類とも呼べないものに変化して、激烈な環境を潜り抜けようとする。生きるということの本能のひとつに、遺伝子を残したい、生きた痕跡を残したいという意識があるのだと思います。その本能のいきついた先がこの二つという。主人公の青澄などは、意志の強さからか、自分をよく保ち、滅びを見つめることが可能だったけれど、実際に、もしもこのような状況になったのならば、どうなのだろう?愚かな争いを繰り返し、本来滅ぶよりもはるかに速い滅亡を引き寄せてしまうのではないだろうか。人はどんな状況であれば、希望を見出し、生きることができるのか。とめどなく考えてしまう本でした。それは別として。この本にでてくる、魚舟が素敵で、なかなかよかったです。いったいどうやったら、こんな発想が生まれてくるのだろう。新年そうそう、良いものが読めたなあ、と思うのでした。

読了日:01月04日 著者:上田 早夕里