紅茶片手に読書している。そして音楽を聴きながら

本の感想、コンサート記録など書いています。

きいろいゾウ、ブログ用感想


きいろいゾウ (小学館文庫)きいろいゾウ (小学館文庫)

映画化のため、書店にて文庫山積みを見かけて購入。かつて読んでいるのですが、意外と内容は忘れていた部分が多かったです(汗)
この作品は、どこか幼い子供のようなツマの語りをどう感じるかで、好き嫌いがわかれてしまうかな、と思いました。私はツマ独特の視線で見る風景の描写が、新鮮で楽しめました。
また、ムコさんとの夫婦の感性の違いが、ツマ視点の描写と、ムコさんの日記という対比でみられるのも面白かったです。

夫婦って、お互いに知らない部分を持ち、感性も違い、考え方も違う者同士が、さらにお互いいろいろな過去を持ち、それでも一緒に生活するものですよね。
この作品には、ツマとムコだけでなく、たくさんの夫婦の姿がえがかれています。うまくいっているところもあれば、ちょっとそうでもないところもある。でも、夫婦で共に暮らすからこその素敵な部分も、きちんと描かれていて、とても好感が持てました。

大地くんという、9歳の男の子の存在も、この作品のきらきら光っている部分だと思います。初恋だからこその、まっすぐな愛情。ツマも、ムコも好きだという、せつなくも純粋な気持ち。「ただ、好きだから、好き」という気持ちを美しいと思うのは、そうでない好きをたくさん知ってしまったからなのかな。

それに対するムコさんの気持ちもまたせつない。「ただ、好きだから好き」だけじゃない。人を思いやり、立場を思いやり、たくさんの過去や人間関係をかかえたうえでの、愛情の示し方。

好きという気持ち、愛情、がたくさんつまった、素敵な本でした。

読了日:02月01日 著者:西 加奈子