紅茶片手に読書している。そして音楽を聴きながら

本の感想、コンサート記録など書いています。

世界を巡ろう

仕事の都合、家庭の都合で、なかなか今、旅行などには行けない状況です。でも、そんな状況を嘆いていても仕方ない。そんなわけで。
今年は、「本を読んで世界一週旅行!!」を企画してみました。
第一弾は太平洋を渡りまして、アメリカです。

アメリカ、行ったこと、ありません!アメリカの人と直接お話ししたこともありません。でも、アメリカで書かれた本なら読むことができます。(日本語訳で、ですけどね(^_^;))

そんなアメリカ代表に選んでみたのが、こちらの一冊(といっても6冊組でしたが…)
ベストセラーみたいだし、現代アメリカということで(笑)


ハンガー・ゲーム(上) (文庫ダ・ヴィンチ)ハンガー・ゲーム(上) (文庫ダ・ヴィンチ)
写真ははじめの一冊のみですが、三部作上下巻で全6冊となります。
たぶん、第一作の本作が、一番人気になるんじゃないのかな?でも、せっかくなら、全部読んでほしい作品です。

ハンガーゲーム(飢えのゲーム)は、激しい格差社会で、中央の富を持つ人向けのショービジネスであり、支配される各地区の人々への恐怖政治でもあります。12ある各地区から男女二人が選び出され、最後の一人になるまで殺し合います。それを、中央の人々はテレビで楽しむのです。(各地区の人々は、自分たちの代表が殺し合いをさせられるところを、同じくテレビで見せられます)各プレーヤーにはスタイリストが付き、美しく着飾ったりさせられる。どこかで聞いた設定だぞ?と思うものの、ゲームを取り巻く社会の描かれ方が秀逸です。貧富の格差、ショービジネスとしての殺し合いという残酷さ。この中で「思惑どおりになど動いてやるものか」との主人公たちの信念が、各地区の革命へと発展してゆきます。

格差社会であり、現在も戦争を続けている(と考えてよいのでは?)アメリカだからこそ、この苦渋が描けるのではないかと思ってしまう描写が多くあります。
特に、戦いで精神を傷つけられた人々の描写が素晴らしい。主人公のカットニスは最初のゲームで勝ち残るのですが、その後ずっと、戦場の記憶から逃れられずに苦しみます。

どろどろの社会、心病む主人公、それでもカットニスの健気さに心打たれます。
「自由を求める心」「愛を求める心」「家族を愛する心」これらが丁寧に描かれます。

カットニスが、幼馴染の青年と、一緒にゲームを戦った青年の二人のあいだでぐらぐらと揺れます。これがじれったく、いらいらもさせられますが(^_^;)それでも、カットニスとピータの間で育まれてゆく愛情や信頼感に、ほっと一息つけるのです。

第一部はあくまでもエンターテイメントなのですが、第二部、第三部とすすむにつれて、だんだん筆者の主張が全面にでてきます。戦いの勝者の虚しさ、広告に使われる人生の淋しさなど、戦いの闇の部分がぐいぐいと描かれます。私は、それがこの作品の良さだと思うのですが、反論は多くあることと思います。



著者:スーザン・コリンズ

読書メーター