ピアノの調べが聴こえる。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/04/12
- メディア: ハードカバー
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今まで読んだ村上作品の中では一番好きかも。
読書メーターでは、ネタばれになるので、記述せず、こちらに。
初期の村上春樹の作品は、どこかジャズのリズムがあるような文章だと思っていたけれど、
これは、上質なクラシックの響きが感じられる文章。
リストの「巡礼の年」第一年スイス『ル・マル・デゥ・ベイ』が全編を彩る。
格調高く繊細で、どこか哀しくそして優しい。
フィンランド、シベリウスの生まれ故郷にある湖畔のサマーハウスで語り合うシーンがとても好きだ。
「人の心と心は調和だけで結びついているのではない。それはむしろ傷と傷によって深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、脆さと脆さによって繋がっているのだ。悲痛な叫びを含まない静けさはなく、血を地面に流さない赦しはなく、痛切な喪失を通り抜けない受容はない。それが真の調和の根底にあるものなのだ」
色彩を持たない人などいない。
村上作品を読んで、泣くとは思わなかった。