紅茶片手に読書している。そして音楽を聴きながら

本の感想、コンサート記録など書いています。

牛田智大 ピアノリサイタル 愛知コンサートホール 感想

久しぶりの牛田くんのリサイタル、愛知芸術劇場コンサートホールにて聴いてきました。
圧巻でした。

リサイタルを聴くのは一年ぶりだったのですが、音がずいぶん変化していました。
以前よりもずっと男らしく、骨の太い音になっています。それでも、柔らかさと繊細さは兼ね備えているのです。
はっきりとした、きらめくような音、やわらかな音、ずんと腹の底から響く音、
天から降りるような音、うめくような音、
とにかく多彩な音を曲ごとに、フレーズ毎に見事に操っていて、茫然とします。

わずか一年で、ここまで進化できるものなのでしょうか…。
凄まじいです。

冒頭は、プロコフィエフの戦争ソナタ7番。難解でありそうな曲なのに、惹きつける力が半端ないです。魂から響き渡るような音。骨太な音が柔らかな響きを支えていて、ピアノを聴いているというより、まるで交響曲を聴いているかのよう。
2曲目はモーツアルトソナタ11番。一転してきらめくような音が降り注ぎます。やわらかくて、笑顔で、それなのにどこか哀しみをたたえた音です。大好きな曲です。とても大切な曲です。
今回、こんなにも優しく愛しみに満ちた演奏で聴くことができて、幸せでした。
3曲目は、リストの「メフィストワルツ1番」悪魔的な音から、愛のささやき、やわらかなこずえの音、ナイチンゲールの鳴き声、全てを呑みこむ怒涛のラストまで、凄まじいです。この曲も難しいんですよ。本当に。なのに、難しいとか技術とかそんなことは一切感じさせない。ただ、心が音に惹かれるのです。

休憩。

4曲目はショパンエチュード「別れの曲」さらりと弾かれるのですが、メロディーの美しさが際立ちます。
5曲目がリストの「ラ・カンパネラ」これね…^^;簡単な曲じゃないんですよ^^;なのにね、もしかしたら冒頭くらい自分でも弾けるんじゃないかって思わせるくらいあっさりと、なんでもないことのように弾かれています…。ラストへの盛り上がり方が凄くいいです。ぞくぞくするくらい、いいです。
6曲目がラフマニノフソナタ2番。ホロヴィッツ版でした。
ラフマニノフソナタ2番って、こんなにいい曲だったっけ?とまた思いました。
だから…、いろいろな演奏はCDなどで聴いているわけです。それで、「こんな曲かな〜」と思って演奏を聴きにいくのですが、その状態で思うのです。
「え?こんないい曲だったっけ?」
魂の入った音というのは、こういう音なのだと思います。不安、哀しみ、そして喜び、いくつもの感情が交差して、せつなくなります。
こちらも魂ごと持っていかれるような演奏でした。

アンコールは、ショパンノクターン2番、エディットピアフを讃えて、乙女の祈りの3曲。

リサイタル前、ちょっと今回難しい曲が多いからな〜なんて思っていましたが
今日この演奏会に行くことができたことに感謝します。
このプログラムを聴かないなんて、損です!

牛田君のプロコフィエフ、そしてラフマニノフは絶品です。
モーツアルトの響きも、きらめくようで、素敵なのです。
しかも、たぶんまだ、伸びしろがあると思えるんです。

どうしよう…帰ってきたばかりなのに、また聴きたくなっている…。