紅茶片手に読書している。そして音楽を聴きながら

本の感想、コンサート記録など書いています。

川崎、デビュー3周年記念牛田智大ピアノリサイタル

行ってきました。川崎。
感想は、応援サイトにアップしたので、こちらでは少し違うことを書こうかなと思っています。
(応援サイトはこちら
  http://ameblo.jp/koutya-403/entry-12001627919.html

先ほど、ミスを見つけて一時この記事を下げていました。
その間に観に来てくださった方もいらっしゃったみたいで。
ご迷惑おかけして、すみませんでした。

今回は、牛田智大さん、デビュー3周年記念ということで。
デビューからの想い出のある曲ばかりを集めたプログラムとなっていました。

プログラム

リスト 愛の夢第三番
プーランク エディットピアフを讃えて
ショパン ノクターン9-2
ショパン 子犬のワルツ
プロコフエフ 戦争ソナタ

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚  休憩  ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

シューマン トロイメライ
シューマン・リスト 献呈(君に捧ぐ)
ショパン 別れの曲
リスト ラ・カンパネラ
ショパン バラード1番
ショパン 英雄ポロネーズ

(アンコール)
フランシス・レイ 「ある愛のうた」
 〜エルガー  「愛のあいさつ」
リスト  「死の舞踏」
ラフマニノフ 「パガニーニの主題による狂詩曲」より 第18変奏
 〜リスト 愛の夢 第3番より


感想は上記の応援ページのリンクで見ていただくことにして。
こちらには、今回の曲のいろいろについて
書いてみたいと思います。


まず、最初と最後に弾かれた、
今回もっともキーとなる曲と思われる、リストの「愛の夢」は
ドイツの詩人フェルディナント・フライリヒラートの詩
「愛せる限り愛せよ」より。

  愛しうるかぎり愛せよ
  愛したいとおもうかぎり愛せよ
  墓場にたたずみ なげきかなしむ
  ときがくる ときがくる

  なんびとか 愛のまごころを
  あたたかくおまえのためにそそぐとき
  おまえは 胸に愛をいだいてあたため
  ひたぶるにその炎をもやすがいい

  胸を おまえのためにひらくひとを
  できるかぎり愛せよ
  いかなるときもそのひとを悦ばし
  いかなるときも そのひとを嘆かすな

  わが舌をよくつつしめよ
  あしざまの言葉をふと口にしたら
  ああ それは けっして悪意からではなかったのに
  けれど そのひとは去り そして悲しむ

  愛しうるかぎり愛せよ
  愛したいとおもうかぎり愛せよ
  墓場にたたずみ なげきかなしむ
  ときがくる ときがくる

  その時おまえは墓のほとりにひざまづき
  うれいに濡れた まなざしを おとす
  もはやそのひとの影もない
  ほそい しめった 墓場の草ばかり

  「あなたの墓に涙をながしている
   このわたくしをごらんください
  わたくしが あなたをののしったのも
   ああ それはけっして悪意からではなかったのです」

  が そういってもその人は聞きもしないし見もしない
  喜んでおまえをいだきにもこない
  しばしばおまえに接吻したその人のくちびるは
  ふたたび「とうに許しているよ」とも語らない

  あの人は 許したのだ とうにおまえをゆるしているのだ
  おまえのおかげで おまえのきたない言葉のために
  あつい涙をとめどなく流していたけれど
  今は しずかに眠っている もうふたたび目をさましはしない

  愛しうるかぎり愛せよ
  愛したいとおもうかぎり愛せよ
  墓場にたたずみ なげきかなしむ
  ときがくる ときがくる

このリストの「愛の夢」で始まり、「愛の夢」で終わるプログラム。
まるで、この詩が、今回のリサイタルを通して流れる主題のように感じました。

いつか死ぬ時がくる。後悔のないように愛しなさい。
それは、精一杯愛し、精一杯生きろとのメッセージのように感じました。


次は、プーランクの「エディット・ピアフを讃えて」ですが、
このエディットピアフの愛は、激しく、そして、周囲の反対にもあった愛であったと思います。
彼女の有名な歌曲「愛の讃歌

  青空が崩れ落ちてきてもいいの
  大地が裂けてもかまわない
  もしあなたが私を愛してくれるなら
  世の中のことなど どうだっていいわ
  愛に満たされた朝を迎えられるかぎり
  私の体があなたの手の下で喜びに震えるかぎり
  どんな困難だって平気よ
  あなたが愛してくれるから

  この世の果てまでも行きましょう
  髪もブロンドに染めましょう
  もしあなたが望むなら
  月を取りにも行きましょう
  運命だって盗んでくるわ
  もしあなたがそうしろと言うなら

  祖国だって棄てられる
  友達だって裏切れる
  もしあなたがそれを望むなら
  世間の人に笑われても
  何だってするわ
  もしあなたがそうしろと言うなら

  いつの日か限りある命があなたを私から引き離し
  あなたが遠く去ってしまっても
  あなたが私を愛してくれる限り なんでもないわ
  だって そうなったら私だって死んでしまうから
  そうして私達の永遠の未来を手に入れるの
  限りない青空の中で
  何も問題のない天国で
  私たちは愛し合うの
  神様は愛し合っている二人を結び合わせてくれるわ

妻も子もいるボクシング世界チャンピョンであったマルセルと
愛し合った、ピアフ。
当然周囲からの反対もあったでしょう。でも、二人は愛を貫きとおします。
それなのに、ピアフが「愛の讃歌」を歌う時、この歌を聴くためにニューヨークから飛行機に乗ったマルセルは、その飛行機事故で亡くなります。

愛の夢」と同じような主題が変奏されて現れているように思います。


ショパンの「ノクターン9-2」そして
「子犬のワルツ」
子犬のワルツは、ラブラブ〜の曲ですよね。
でもね、この時ショパンがラブラブだったのは
ジョルジュ・サンド」です。
身体の弱かったショパンを献身的に守っていたサンドですが、
ショパンとジョルジュサンドは…。
(だんだん、説明するのも哀しくなってきた……)

第二主題が現れたようです(笑)


「戦争ソナタ
これは、牛田さんの解説にもありました。
牛田さんが飼っていらっしゃったインコをイメージされているそうです。

ちょっと曲調が変わって、展開部にはいったみたい(笑)


ここで休憩です。


シューマン、リストの「献呈」
シューマンの結婚式にリストが編曲して贈ったものですが。
もともとのシューマンの「献呈」(ミルテの花)には
詩がついていました。

  きみこそはわが魂よ、わが心よ、
  きみこそはわが楽しみ、わが苦しみよ、
  きみこそはわが生を営む世界よ、
  きみこそはわが天翔ける天空よ、
  きみこそはわが心の悶えを
  とこしえに葬ったわが墓穴よ。

  きみこそはわが安らぎよ、和みよ、
  きみこそは天から授かったものよ、
  きみの愛こそわが価値を悟らせ、
  きみの眼差しこそわが心をきよめ、
  きみの愛こそわれを高めるものよ、
  わが善い霊よ、よりよいわが身よ。


ふふふ。これもとってもラブラブ。
で、クララとシューマンも周囲の反対を押し切って結婚したのです。
その結婚式の時に、友人のリストが編曲して贈ったのが
このリスト編曲の「献呈」です。
でも、リスト編曲版は、クララは気に入らなかったとか。
で、クララは、リストのピアノコンチェルトを弾いた後、
アンコールでリストの「ラ・カンパネラ」を弾くよう
リクエストされてシューマンの「トロイメライ」を弾いたという
エピソードもあったりして。

その「トロイメライ」も今回のプログラムにありました。

そして、ラブラブだったクララとシューマンの愛も
シューマンの病と死によって終わりを告げます…。

愛していても、いつか終わりはあるものですが…。
始めに提示されたリスト「愛の詩」の歌詞が
ふいに脳裏に蘇ります。

そして今回のプログラムでは、「トロイメライ」と「献呈」の後にすぐ
ショパンの「別れの曲」と、クララが弾かなかった、リスト「ラ・カンパネラ」がはいってきています。

そして、ショパンの「バラード1番」

牛田さんがトークで「誰もが人生の主人公。人生、辛いことも哀しいことも、いいこともあるけれど、頑張っていこうね」と語り
ショパンの「英雄ポロネーズ」で幕。でした。

そう。誰もが、人生の主人公。誰もが、自分の人生の英雄なのです。
英雄ポロネーズ」は牛田さんから、人生を生きる全ての人への応援歌だと思いました。




で。

アンコール
アンコールはまた、「愛」と「死」のテーマが繰り返されます。

まずは、フランシス・レイ 「ある愛の詩
今回初披露の新曲!
悲恋ものの映画の曲です。
主人公の男性は、周囲の反対を押し切って、女性と結婚。
でも女性は白血病になり、亡くなります。
愛とは決して後悔しないこと」(Love means never having to say you're sorry)という言葉が、胸にささります。
そう。哀しい愛を描いても、それは哀しみじゃない。
だって、愛はそこにあったのだし、やっぱり愛は幸せなのだから。

そんなメッセージさえ感じるこのアンコール第一曲め。

次はメドレーで
エルガー  「愛のあいさつ」
エルガーも、8歳年上の女性と、周囲の反対を押し切って結婚しています。この「愛の挨拶」は二人の結婚記念にエルガーが奥様に贈った曲です。

ここに、アンコールでまさかの
リスト「死の舞踏」がきます。
当日は、とってもびっくりしましたが。
でも、なんだか、こう並べてみると
「う〜ん。あって当然かな?」と思えるのは何故なんでしょう……。

そして
ラフマニノフ 「パガニーニの主題による狂詩曲」より 第18変奏

とっても素敵な曲。
今回、メインプログラムに、ラフマニノフがなかったので
これを弾いていただけてとても嬉しかったです。
私は、牛田さんの弾くラフマニノフが大好きなので。

そしてこの曲の最後の音と繋がって
今回のメインテーマ、主題である
リストの「愛の夢」が繰り返されます。

プロローグであり、エピローグ。
まるで、今回のこの会場のようにぐるぐるとまわるような
プログラム。

障害を乗り越えて、愛し合う恋人たちを描き出す
実に見事なプログラム構成だと思うのですが、
如何でしょうか?

「愛しうる限り愛せよ」
牛田さんのピアノは、本当に
この日、とても優しく、愛と思いやりに満ちた演奏でした。

ホワイトデーの日に。
おおきな一つのメッセージ
障害や壁にぶち当たることもあるけれど
「愛しうる限り愛せよ」


以上。プログラム妄想でした。