紅茶片手に読書している。そして音楽を聴きながら

本の感想、コンサート記録など書いています。

ガラガラの音

赤ん坊の頃の記憶があります。
というと、嘘だろ〜と自分でも思ってしまうのですが(笑)

一番古い記憶は、こんな光景です。

ぼんやりと見える天井。たくさんの女の人が来ています。
自分をかわるがわる覗き込む顔。
やがて遠くで女の人達のおしゃべりが始まります。
寂しいな、と思って、「え〜」と声を出してみます。
誰も反応してくれません。
もう一度「あうう〜」と声を出してみます。
誰も反応してくれません。
母の「いいのよ。ほっておけば」という声が聞こえます。

寂しいな、と思っていると
姉が枕元のガラガラを振ってくれます。
ころろん。ころろん、
柔らかな音が聴こえてきます。
この音が、私はとてつもなく好きでした。
「天国の音だ」って思っていました。
もう一度音を出してほしくて
「あうう」と必死になって声を出します。
すると、姉が笑います
「ねえ、お母さん知ってる?この子ね、これが大好きなんだよ」
姉が嬉しそうに、ガンガンとガラガラをふります。
そんなにガンガン鳴らすのは嫌なんだけどな。
もう一度、ころろんって鳴らしてほしいな。

そんなことを想っている間に、まわりが真っ暗になります。

これが、一番古い記憶です。

姉が鳴らす、ころろん、ころろんという音。
本当は、丸い達磨さんのような、音の出るお人形だったと、
後で写真を見て知りました。
この音が、とてもとても大好きでした。
それが強烈な記憶として残っています。

自分ではその音が出せなくて、なんとかその音を聴かせてほしいと
強く強く願っているのに、
うとうとと眠ってしまうのです。

しばらくしてからは、姉がピアノを習い始めて。
小さな頃、熱を出して、眠ってばかりいた私にとっては
(時には一か月も寝込んでいることもありましたので)
姉が弾いてくれるピアノの音が
ガラガラの代わりの、「天国の音」となりました。
スケールと和音だけの、単純な音のくりかえし。
姉が淡々と弾く、スケールと和音。
これが、とてもとても好きでした。

今の音楽(ピアノ)好きの原点は、ここなのだろうなと
思うのです。

本の紹介です。

1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)

1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)

たくさんの記憶と今とが錯綜する物語。たくさんの文学と音楽
(たくさんのクラッシク音楽も)にあふれた物語。
そして、初恋の物語。
人生をどう生きるかという物語でもあるのかも。

賛否ある物語ではないかと思いますが
一読の後、忘れることができない物語となりました。